涙涙沈黙が訪れ、何も見えず、聞こえなくなる。 それは、気持ち悪くもあり、心地よくも感じる。 妙な安堵感というものが、漂っている感じだった。 手も、動かなかった。声も、でなかった。 かすかに目に移るのは、数人の忍・・・場所は、森だろうか。うっそうと木が生い茂り、耳に届くのは、常人では聞けぬほどの小さな声。 忍び者は、全て顔を知っている。・・・同胞だ。 その内二、三人は、忍刀やら鎌やらを持っている。恐らくは、俺を消しに来たのだろう。 ・・・任務に失敗したものは死・・・ そのぐらいわかっていた。 俺の目的は、敵地に潜入し、砦内の構造をくまなく調べ、俺たちを雇っている小国 の殿に提供することだった。 ただ死んでしまうより、せめて何か情報を得て仲間に伝えることが出来れば、それはそれで任務を全うしたことになる。 しかし・・・俺は情報を得たものの・・・帰路を走る途中、敵方の忍者にみつかり・・多勢に無勢、折角手に入れた情報もろとも・・・殺されてしまった。 実際、今死んでいるのか、まだ生きているのか、自分でもわからない。 ただ、非常に楽で、気分が良い。 「こいつは、任務に失敗した。」 「ああ・・・始末しなければな。」 「だが、情報も得られず、手ごまを失った御頭は、ひどく嘆かれるだろうな。」 「しかしこいつだって無念のうちに死んだはずだ。それは、手前らが代行するしかないだろう。」 「まぁ・・・そうだな。こいつの無念、晴らしてやろう。」 声が・・・聞こえる。 その内容は、俺への情であったり・・・皮肉だったり。 やっぱり、死んだのか・・俺。 忍は、死んだ後、墓石の下で眠ることはない。 忍は、多くの情報を漏らしてしまう。 例えば、敵に死体を収容されると、俺の属する流派、里は全て調べ上げられ、里への攻撃策、対処方法を練り上げられてしまうからだ。 そのため、仲間が死んだ場合、情報漏れを防ぐために・・いち早く仲間の手によって消される。 「では・・」 あぁ、もう駄目だ。もうこの体に、とどまることは出来ない。 「じゃあなッ」 ここは何処だ・・・?やけに、体が軽い。 確か俺は・・・そうだ、任務をまっとうできずに、倒れちまって・・仲間が、俺を始末しようとして・・? そこまで考えて、俺はやっと気がついた。 手が動き、声も出るようだ。 そして下に視線を移すと、そこには切り刻まれた俺の体を、収容している仲間の姿が見えた。 これはいわゆる・・・俺は今、『霊』になってんのか? 俺はまた視線を下に落とし、良く見てみた。 (確かに俺だ・・) 胴と切り離されている忍者の首は、確かに俺だった。 そして・・不意に上を見て、驚いた。 (・・・・っ!?泣い・・てる?) 仲間の一人が、表情を見せないようにうつむいている。 今、光っていたのは何だったのだろう・・ そこまで思って、俺の意識は完全に途絶えた。 「ここは・・」 気がついたら、綺麗な花園に居た。 遠くのほうでかすかに水の流れる音がし、すぐ近くに山が見えた。 「三途の川と・・奥山か?」 本当に死んだんだな・・ そう思ったのがなんだか不思議で、思わず微笑した。 死ぬのが、安らぎを与えるのなら・・・ 生きるって、何なんだろうな・・・ 「さて・・と。」 俺はじっと山を見据えると、少しずつ歩み始めた。 この山を越えたら・・俺は本当に死んだことになるな・・・確かに、任務をこなせなかったのは無念だが、あいつらのことだ。任せておいて良いだろう。 そして何より・・・ (生まれてはじめて・・・) (それが、俺に向けられたのかどうかは判らないけど・・・) 本当に。 最初で最後の・・・人の涙というものを見た。 それを見たことで、こんなにも胸が苦しくなった。 そんな感情を見つけられただけで・・・もう十分だ。 そして、足を踏み入れる。 この世に未練はないと自分に言い聞かせながら。 ・・・はじめて涙を見た日。 俺は死んだ。 ~言い訳~ 何だこれは。何が書きたかったのか・・・文才ねぇなぁ、アタイ。 どうやったら上手くいくかなぁ~? 誰か教えて~!! ■ |